培養肉の世界市場は2030年には200億ドル!?日本政府も開発支援やルール作りに着手
食・栄養
新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻などで、世界的な食料不足が懸念されています。その解決策として、牛などの動物の細胞を増やして作る培養肉の技術に注目が集まっています。様々な会社が培養肉に参入していて、牛や豚の培養肉はもとより、魚やホタテなどの培養肉の研究開発もなされています。培養肉は試験管肉とも呼ばれています。そして、このように、人工的に牛肉や豚肉、魚肉などを生産する技術のことを「細胞農業」と呼ぶこともあります。培養肉と似た言葉に代替肉がありますが、これは、豚肉や牛肉、鶏肉などの動物肉を使わずに(たとえば大豆などを使って)、従来の肉のように利用できる食材のことを指し、培養肉とは別のものです。
食料不足解消の観点から注目されている培養肉ですが、家畜用の土地や水を節約でき、環境負荷の軽減にも貢献すると考えられています。このように、現在、世界がかかえている難問を解決する力を秘めていることから、培養肉の世界の市場規模は2030年には、200億ドルに達するともいわれています。
培養肉の問題として、生産コストが非常に高いことが挙げられていました。しかし近年、培養肉の普及に向けた、生産コストは低下傾向にあります。たとえば、2013年にオランダの科学者が培養肉の生成に成功した時、ハンバーガー1つ分で30万ドルかかりました。現在は、鶏の培養肉では100グラムあたり1.5ドル程度まで下がっています。
このような背景から、日本政府も研究開発の支援や安全性確保などのルール作りに着手しています。ルール作りの例としては、培養肉が含まれる食品に対して、分かりやすい表記を義務づけ、消費者への透明性を高めることや安全管理の基準の作成などです。
培養肉は大豆でつくる代替肉や昆虫などの代替たんぱく源と比べ、味や食感を再現しやすいなどの利点があります。また、飼育に時間や手間がかかる動物の肉も大量に作れる可能性があり、その観点からも期待されています。たとえば、エビやフォアグラなどの高級食材を培養する試みも進行中です。将来、培養肉の技術で高級食材が手軽に食べられることになるかもしれません。
(日本経済新聞より抜粋)
2023年2月27日更新