現在どのようなお仕事をされているのですか?
セントレジスホテル大阪 イタリア料理「La Veduta(ラ ベデュータ)」で料理長を務めています。
ミシュラン5つ星の外資系ホテルなので、日本人がトップに立つのは稀なことだったのですが、前の配属先であるフレンチビストロ「Rue d’Or(ル ドール)」でも、29歳ではじめて料理長を任された時は本当に光栄でした。
どんなところにやりがいを感じますか?
この若さで貴重な経験をさせてもらっていますが、もともと器用なわけではないんですよ。だけど学生時代から同期に刺激され、練習はものすごくしていました。当時から仲間の存在が大きかったです。
もちろん今でもプレッシャーはあるものの、原価のコントロールや企画の提案など、一通り流れも把握し、やっと落ち着いてきました。お客様の評価も最初は不安でしたが、『おいしくなった』と言ってくださる方が多くてうれしいです。月替わりのコースを始めてからリピーターの方も増えてきましたし、毎月来てくださる方もいらっしゃり、励みになっています。
学生時代に学んだことが今どのように生かされていますか?
辻󠄀調理師専門学校で当時開設されたばかりの調理技術マネジメント学科に進学しました。入学当初、進むジャンルは考えてなかったのですが、初めて受けたフランス料理の授業で、フォアグラのロッシーニを食べたとき、めちゃくちゃ感動して、世の中にこんなおいしい料理があるのかと(笑)。その時点でほぼ、道は決まりました。
いつか渡仏したいと考えていたところ、親からの後押しもあり、辻󠄀調グループフランス校へ進学。必死で勉強し憧れの「ポール・ボキューズ」の研修生に選ばれることができました。研修生ではなくいち従業員として扱ってもらい、やりたいと言ったことは任せてくれてありがたかったです。フランス校まで行かせてもらえたおかげで、働き始めてからどんなにつらくても踏みとどまれました。『ここで辞めたら親不孝。恩返しできない』と、必死に頑張ることが出来ました。今は和食や中華の技術を取り入れることもあります。他ジャンルも知っているとアイデアを展開しやすいので、和洋中すべてを学べたことも役立っています。
今後の目標を教えてください。
やっぱり人とのつながりが最も大切。今では大阪の食材を使うイベントも行っているんですが、今後はさらに生産者の方々とのつながりも増やし、料理で発信していけたらと思います。食材だけでなく、器の生産地にも、スタッフみんなで行けるようにしたい。
つくってくれている人と対面して気持ちがわかれば、さらに思いも強まるでしょうからね。お客様との関係もそうです。直接のやり取りはもちろん、召し上がっている笑顔を見るだけでも、疲れが一気に吹っ飛び、意欲も高まります。進路に悩んだけど、料理の道を選んで本当に良かった。関わる人それぞれに喜んでもらえる、素晴らしい仕事だと思いますよ。