【業界就職最前線】保育業界を中心に比較的安定した状況だが近い将来、求人が減少に転ずる予測も
こども・福祉・心理・看護・医療・健康
当社では、こども・福祉・心理・看護・医療・健康系の学科・コースを設置している大学、専門学校などにアンケート調査を実施。就職の現状や就職指導のしかた、業界の展望などの“生の声”を入手しました。就職を取り巻くさまざまな現状について、一緒にみていきましょう。
求められる能力や人気の業界も昨年より大きくは変わらず
当社がこども・福祉・医療・健康系の専門学校各校に対して行ったアンケート調査によれば、令和4年3月時点における各校卒業者の就職状況、それと企業や関連施設の求人数については、昨年度より大きく変わらないと答えた学校が多数を占めました。具体的な回答としては「業種的に、常に安定した求人が確保できている」(仙台保健福祉専門学校)、「コロナ流行期である一昨年は求人数が減ったが、今年と昨年では変化がない。コロナ禍と関係なく、保育園や幼稚園、こども園は子どもを受け入れていくため、新卒の人材は必要」(国際こども・福祉カレッジ)などとあり、現在は保育・福祉業界の求人数は安定していることと、コロナ禍の影響がこの時点である程度落ち着きを見せていた影響がうかがえます。
さらに「ここ数年の学生の内定先や志望する業界・職種に変化はありますか?」「ここ数年で企業が学生に求めるもの(能力・資格等)に変化はありますか?」という設問についてもそれぞれ「いいえ」「どちらとも言えない」という回答がほとんどで、よくも悪くも就職周りの現況は安定していると言えそうです。
志望する業界の「職業理解」を就職支援で重視する学校増加
就職支援で重視するポイントという設問について、今回多くの回答があったのは「挨拶・マナー」で、ついで多かったのは「面接指導」「職業理解」「資格取得」などでした。例年よりも、志望先の仕事について理解を深めようとする傾向が高まっているようです。
個々の回答では「就職指導専任教員によるサポート以外に、全学科に就職担当教員を配置。普段の学生の様子を理解している教員が就職についてもサポートすることで、より学生の志望に寄り添っている」(仙台保健福祉専門学校)、「保育士と幼稚園教諭2種のW取得によって、保育園・幼稚園・こども園のいずれにも就職が可能」(関西保育福祉専門学校)、「学校独自の就職フェア、卒業生による講演、キャリアコンサルタントによる就職支援、卒業後のフォロー、教育・福祉の現場経験者による指導、公務員対策講座などを実施」(草苑保育専門学校)など、各校それぞれ独自の支援策をとっていることがわかります。
【学校に聞いてみました】どんな点に力を入れて就職支援を行いましたか?
1. 挨拶・マナー
2. 面接指導、職業理解、資格取得、個人面談
5. 実習・インターンシップ
その他 技術習得、マナー・身だしなみなど
作業療法士における需要・供給のミスマッチ解消も課題か
最後に、求人状況や就職動向の特徴、業界のサービス等について来年度以降の予測・展望を求めた設問に対しては、以下のような回答をいただきました。
「歯科・幼児保育分野については常に人材不足が続いており、今後も安定した求人確保が可能と予測。リハビリ分野は作業療法士のニーズが高まっており、求人がより増えていくと予測。一方で作業療法士を志望する学生は全国的に多くなく、このミスマッチ解消が業界全体として必要」(仙台保健福祉専門学校)、「保育者不足により、引き続き求人が多いのではと考えている」(関西保育福祉専門学校)、「保育業界の求人数は2025年頃にピークを迎え、2035年以降から減っていくと予想」(国際こども・福祉カレッジ)
保育・福祉業界の人材不足などから、今後しばらく求人数は安定するという予想が多いですが、一方で近いうちに減少に転ずるという見方も出ています。
保育・福祉・医療・健康業界 コロナ禍で就職に変化は?
新型コロナウイルス感染症が国内にまん延してから3年目となりますが、業界就職最前線では昨年度に続いて「コロナ禍において、就職指導はどんな取り組みをされましたか?」という質問を行い、各校よりさまざまな回答をいただきました。具体的な内容をみると「原則対面での指導が行えたことでこれまでと基本的には変わらず指導を行えた。オンライン面談の実施が若干増えた点は、コロナ禍ならではと感じる」(仙台保健福祉専門学校)、「オンラインでの面接指導に力を入れた」(国際こども・福祉カレッジ)など、前回の調査でも多くの回答があったオンライン面接・面談に、引き続き力を入れている学校が多いようです。一方で、「コロナ禍前後で就職指導の変化はほとんどない」(関西保育福祉専門学校)という回答もありました。
また、「新型コロナウイルス感染症の影響で、業界の就職動向に変化があると感じますか?」という設問については、今回は変化はないという回答がほとんどでした。保育・福祉業界は常に人材が必要とされていることに加え、コロナ禍が2022年の前半期にかけて、一時落ち着きを見せていたことも相まってか、このような結果になったと思われます。ただ、中には「首都圏へ就職しようとする学生数は減少した」(国際こども・福祉カレッジ)という意見もありました。人口の多い都市部への就職については、依然慎重さを守っている人が多いようです。
一時大きく減少していた国内感染者数ですが、 2022年7月時点、また急速に増加してきています。私たちも引き続き日常生活において注意が必要ですし、これによって来年度の就職状況がどう変化するかも読みづらくなっています。
学校に聞いてみました
新型コロナウイルス感染症の影響で、業界の就職動向に変化を感じますか?
具体的にどんな変化を感じますか?
●首都圏へ就職しようとする学生数は減少した。(国際こども・福祉カレッジ)
(出典:当社実施アンケート)
2022年8月25日更新