社会福祉法人 東香会
渋谷東しぜんの国こども園
保育士・アトリエ担当
河合 宣さん

かわい のぶ▶香川県出身。京都芸術大学(当時は京都造形芸術大学)芸術学部こども芸術学科で保育士資格を取得。卒業後、2016年から社会福祉法人東香会 しぜんの国保育園で保育士を3年間勤めた後、2019年に渋谷東しぜんの国こども園に異動。現在は同園で保育業務と「アトリエ」を担当する。
子どもの心が動いた瞬間をどれだけキャッチできるか、アプローチをどれだけ丁寧にやれるか、心がけています
美術の知識と経験を保育に活かし「アトリエ」の担当に
―現在のお仕事についてご説明ください。
保育士と、「アトリエ」の担当をしています。このこども園には「アトリエ」といって、子どもたちが自由に創作や表現をすることで、心を豊かにするための専用スペースがあります。例えば私がアトリエで絵を描いたり、粘土をこねていたりすると、子どもたちが集まってくるので、一緒に描いたり作ったりをします。
また紙や粘土以外にも、金づちやペンチなどの道具、針金や鉄くず、壊れた何かの部品といった「素材」もアトリエには置いてあり、それらを使ってみんながものづくりをする時の手伝いも行います。アトリエにいない時は、いろんなクラスに入って保育をしています。
アトリエにて、河合さんと子どもたち
―保育の道に進んだきっかけは?
高校の頃から美術の分野に憧れていたのですが、子どもとふれあうことも好きだったので、悩んだ末に芸術も保育も学べる京都芸術大学に進学しました。その後、就職活動時に美術か保育かまた悩みましたが、大学の説明会で知ったしぜんの国保育園が、園内に「アトリエ」という場所を作って、そこで子どもたちが積極的に表現活動をできるよう取り組んでいると知り、働いてみたくなって採用試験を受けました。
保育士となってからは、美術の知識と経験を保育の仕事に活かしていましたが、今のこども園を新設するとなった際、園の理事長から「新しいこども園でもアトリエを作りますがやってみませんか?」と声をかけていただいて、ここの担当となりました。
あの子の表現の一部になれたのかな?
―これまでのお仕事の中で、印象深かったことは?
以前、絵があまり得意じゃなかった子がいて、ある日私がアトリエで絵を描いていると、ほかの子たちにまじってその子も「ぼくもやってみたい」と来て、それからよく一緒に怪獣を絵に描いたり、粘土で作ったりをするようになりました。そのうちに彼はめきめきと絵が上達して、それが他の子にも伝わって、みんなから憧れられるようになりました。
彼の卒園後にお母さんとお会いする機会があり、(彼が)アトリエに行くようになってから絵を描くことやものづくりがとても好きになりました、とお話を聞き、その時、自分もあの子の表現の一部になれたのかな?と思いました。
大事なのは、子どもが何を表現したかったか
そこを理解し、寄りそうこと
―アトリエにおいて、意識していることは?
子どもたちは、アトリエにあるいろんなものからインスピレーションを受け、誰にも言われず自分たちで考え、表現します。その時大事なのは、その子は何を表現したくてその素材を選び、どう描き、作ったのか、という点です。
できた作品の見た目や完成度は関係なくて、その子はどういう思いからその表現に至ったのか。そこを理解し、寄りそうことが重要なんです。子どもの心が動いた瞬間をどれだけキャッチできるか、その心の想いから表現が生まれる過程へのアプローチをどれだけ丁寧にやれるか。そこを常に心がけています。