高血圧でも大丈夫!?キリンがもつ「強心臓」の秘密
動物・環境
キリンは長い首を進化させたことで、草原でいち早く捕食者を見つけやすくなるとともに、食料となる葉を得やすくなったと考えられます。一方、高い位置にある脳まで血液を押し上げるため、心臓には拍動のたびに強い負荷がかかります。長い首の分だけ、心臓にかかる圧力が高くなり、血圧は上昇し、人間なら医師から厳しく指導されるような高血圧になってしまいます。しかしキリンは、ライオンから逃れられるくらいのスピードで疾走できます。高血圧に耐えるキリンの「強心臓」の秘密はどこにあるのでしょうか。中国西安の西北工業大学の研究チームは、キリンのゲノム(遺伝情報)に、他の種には見られない特徴的な変異を発見しました。変異のあった遺伝子の1つは、人間では心不全にもつながる高血圧に関係するものでした。研究チームは、2つのマウスの集団に、ホルモン剤を注入して血圧を上げ、その反応を調べました。片方のマウスの集団は、ゲノム編集技術でキリンの遺伝情報に変えています。血圧を上昇させるホルモン剤を28日間投与したところ、何もしていない野生型マウスの方の心臓には、「線維化」が多く認められました。ここで言う「線維化」とは、高血圧で心不全を起こした人間によく見られる、筋肉が肥大して硬くなることです。これに対し、もう片方のキリンの遺伝情報を持つマウスの心臓は、線維化がほとんど見られませんでした。これより、キリンは独自の能力を進化させて、危険な心臓の線維化をある程度抑制していると考えられています。
参照:日本経済新聞
2024年6月10日更新