自然保護のスペシャリストに聞きました

環境省 関東環境局
南アルプス自然保護官事務所
自然保護官 結城 貴志さん

ゆうき たかし▶福岡県出身。広島大学生物生産学部卒業。環境省入省後、北海道地方環境事務所に赴任。その後、京都御苑管理事務所、近畿地方環境事務所を経て2025年11月、山梨県の南アルプス自然保護官事務所に赴任。現在は南アルプス国立公園での自然保護活動に務める。

高山の雪面を歩く一匹のオコジョに
自然の懐の深さ、生き物の強さを感じました

故郷の野山、瀬戸内海での学び

 小さな頃は福岡ののどかな地域に住んでいて、よくかけ回って遊んだ近所の田んぼや裏山が、私の原風景でした。
 大学では海洋系の研究室で学んでいて、瀬戸内海の漁獲量減少や、海の栄養が不足することによって海苔の色や風味が落ちてしまうといった課題について、地元漁業者の方の船に乗せてもらって研究をしたり、状況を聞いたりして、海の環境をどのように改善すれば、海の生き物が豊かになり、かつ漁業者や養殖業者の方々も喜ぶ海の状態になるかということを研究していました。そんなふうに自然と向き合って課題解決に取り組む経験から、環境保全の仕事をしようと決めました。

過剰開発やニホンジカから生態系を守る

 私の現在の仕事は、南アルプス国立公園における高山生態系の保全活動です。区域内では近年ニホンジカの数が急増していて、貴重な高山植物が食べられたり、踏み荒らされたりと被害を受けているため、植物の生育地周辺に防鹿柵を設置するなど、積極的にシカが入ってこないよう対策しています。また、高山生態系の調査・研究も行います。こちらは地元自治体や研究者の方々とも話し合い、協力して行います。
 他には、公園内の特に自然豊かな場所で大きな施設が建設されると、生態系や景観に影響が生じてしまうため、それらが適切に実施され、かつ公園全体での来訪者による利用も適切に進むように許認可を出す仕事もしています。

環境保全の話をまとめ、成果に結びつける

 仕事をする際、私の立場は、本の編集者のようだと感じることがあります。例えば自然の分野は研究者の人が詳しいですし、地域のことはその地域の人が詳しい。そんな方々の話を聞きながら意見をまとめ、地域への貢献、環境保全のための方法へと結びつけます。それが何かしらの成果につながった時は、楽しさを感じます。
 高校時代の私はラグビー部に所属していて、チームメイトとああでもないこうでもないと話しながら作戦を考え、試合に臨んでいたのですが、あの頃の経験はこの仕事にも少なからず生きているように思います。

はじめて北岳で見た世界と小動物

 南アルプスからの景色はどれも壮大で美しく、見ていて荘厳な気持ちになります。特にはじめて北岳(※)に登った時は、あたり一面雪で本当に静かで、生き物の気配なんてない雰囲気でした。そこに一匹のオコジョがひょこひょこ歩いてくるのを見て「こんな厳しい環境にも動物が住んでいるんだ…」と自然の懐の深さ、生き物の強さを改めて覚え、嬉しくなりました。


※標高3193m、富士山についで日本第2位の高さを誇る山。

自然だけでなく地域の活性化にも貢献したい

 生態系の保全というのは色々と工夫が必要で、シカの数をどこまで減らすのか、植物をどこまで回復させるのか、ゴール設定の有り方は様々だと思います。私自身、今後のこととして考えていることは、短~中期的には、赴任する地域の自然の保護に何らか結果を出せるようなプロフェッショナルになりたいと思っています。長期的には、その技術をとおして、自然に限らず、地域の活性化にも貢献できる人間になれたらなと思っています。

自然保護の仕事をめざす高校生へのメッセージ

自分の心が動いた方向に飛び込んで
いろいろ迷いや心配もあるかもしれませんが、まずは自分がやりたいと感じたこと、心が動いた方向に飛び込んでみてください。時には失敗するかもしれませんが、トライ&エラーを繰り返しながら進んでいけば、そこで経験したことが自身の物事の見方を変えることに繋がり、より良いやり方がわかってくると思います。あとは、友達でも先生でも、好きなことでも、あなたの世界を広げてくれる人やものとの出会いを大切にすると良いと思います。

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