建築設計のスペシャリストに聞きました

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株式会社 日建設計
スペースデザイングループ
佐野 優さん

さの ゆう▶早稲田大学大学院 創造理工学研究科 建築学専攻を修了後、株式会社 日建設計入社。2024年6月の取材時は設計監理部門に所属。今後は、ジョブローテーションで設計部から監理部に異動することになっている。ものづくりの現場監理を経験し、建物がどのように作られているのか理解を深め、設計の仕事に還元したいという。

きっかけは空間・デザインへの感動と恩師のアドバイス
描いたものが実際の形になることが建築の醍醐味

デザイン展での感動が建築分野への入口に

 中学生のとき、母に連れられて港区の『21_21 DESIGN SIGHT』で開催されていた「チョコレート」展に行ったことが、建築に興味を持つきっかけでした。安藤忠雄さんが設計した建築に、様々なクリエイターのチョコレートをテーマにした作品が展示されていて、その空間や空気感に心を惹かれ、「デザイナーになりたい!」と強く感じました。その後、担任の先生にその想いを話すと、デザインや芸術を総合するものは建築だよとアドバイスされ、先生の教え子が主宰しているアトリエ系建築設計事務所に連れて行ってくれました。
 当時、建築は硬派な世界だという先入観がありましたが、その事務所ではクリエイティブな発想の中で設計が行われており、面白そうだと感じました。それを機に建築を見たり本や雑誌を読んだりすることで、建築が芸術的な面だけでなく社会的な面も持つことに気づき、ますます建築への憧れが強まりました。

大きなものが実際の形になる面白さ

 建築設計の仕事では、意匠設計者と構造・設備などのエンジニアが協働します。私たち意匠設計者は、数人で1つのチームになりアイデアを出し合い検討し、クライアントとの打合せを繰り返し、図面にまとめます。
 建築の最大の面白さは、描いたものが実際の形になるという点にあると思います。建築は自分をはるかに超える大きな存在です。建物として単体で存在するだけではなく、社会・街の一部として存在しています。そのため責任とともに、やりがいも大きいのです。

自分が設計した建築が目の前に存在する

 仕事で印象に残っていることとしてまず思い浮かぶのが、初めて自分が携わった建築の設計と現場監理における経験です。高さ60mのテナントビルで、窓をランダムに配置した特徴的な外観を設計しました。初めて設計を担当するプロジェクトだったので、プレゼンの準備に手間取っており、プレゼンが間近に迫ったとき、上司が模型作りを手伝ってくれて、最後は二人でクタクタになりながらクライアントの元へ持っていったのを覚えています。
 また現場監理段階で、完成間近に建物を覆う足場が外れた日のことです。現場に向かって歩いていた際、徐々に建物の角が見え、次に特徴的な窓、建物全体が見えてきて、思わず声を上げて上司と喜び合いました。その光景は今でも目に焼き付いています。自分が設計した建築が、目の前に存在していることを実感したときは、とても嬉しかったですね。

当たり前とされていることに疑問を持つ

 仕事では、「当たり前だと思われていることを疑ってみる」ことを大切にしています。単に、「通常はこうやって作るよね」ではなく、「これは本当に必要なのか」など、当たり前だと思われていることを別の角度から考えてみることを常に意識しています。
 例えば、日建設計東京ビル3階にあるトイレの設計に取り組んだときのことです。ジェンダーレストイレを計画するという要件の中で、よくよく考えてみると「ジェンダーレス」という言葉で形容すること自体が正しいのか疑問に思いました。そのように形容すると、男女どちらかの選択肢しかない従来のトイレに困っている性的少数者のためだけに作ったと捉えられてしまう可能性があります。私たちが目指したのは、性別を問わず誰もが快適に利用できるトイレだったので、「どのようなジェンダーレストイレを作るか」という問いを、「性別を問わず、誰もが使いたくなるトイレとはなにか」という根源的な問いに置き換えることで、新しいコンセプトのもと、新しい形式のトイレを実現することができました。

建築業界をめざす高校生へのメッセージ

建築を学んだからこそ見えてくることがたくさんある
もし目指す分野に迷っているなら、素直に自分が心惹かれるままに進んでみてほしいと思います。建築を学ぶことは、建築を通して社会や人間の「ありよう」を学ぶことに繋がっています。建築を学んだからこそ見えてくることがたくさんあります。ぜひ、自身の能力の限界を決めつけず、未来を切り開いてください。

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