株式会社イー・エス・ピー
新東京第二工場 木工
塩田 浩規さん

しおた ひろき▶1998年大阪生まれ。地元の高等学校を卒業後、2016年ESPギタークラフト・アカデミー大阪校に入学。2018年卒業し就職のため上京。株式会社ESP入社、新東京工場でギター製造に従事し8年目。近年は同社のショーモデルなどのデザイン・製作にも取り組んでいる。
ゴールの見えないギター作り
AIを凌駕する“ハンドメイドのチカラ”を磨く
軽音楽部の強豪校でギター三昧の3年間
ものづくりに興味を持ちギター専門校へ進学
中学生のころからギターが大好きで、高校は軽音楽部の強豪校に進学しました。バンド活動に励み“ギターのことしか考えていなかった”3年間でしたが、好きすぎて「もっと知りたい!」とギターを分解して組み立て直す、ギター好きならば誰もが通る道を歩んだのを憶えています。高校3年生のときに先輩からお話を聞いたことも後押しして、卒業後はESPギタークラフト・アカデミー大阪校(以下GCA)へ進学しました。元々ものづくりに興味があり、ミュージシャンではなくギター技術者の道を選択したのは、現実主義の性格かもしれません。

夢の場所・GCAで充実した学生生活
ギターコンテストの他校生作品に刺激も
GCAでは「あっという間」の学生生活でした。私にとっては毎日が目新しい夢の場所であり、楽しかったことばかりが思い出されます。勿論、課題も多くテストもありましたが、充実した日々を過ごせました。少数精鋭のGCAは先生もいい方ばかり。10代から3,40代の学生が和気あいあいとしながらも、皆でよく意見交換を重ねて切磋琢磨していました。また、「サウンドメッセin OSAKA」ではギタークラフトを学ぶ大阪の各学校がギターを出品するコンテストが催され、他校生の作品にも刺激を受けましたが、その中でもGCA生の作品は特殊な形状のギターが多く、ESPのDNAが学生時代から受け継がれていると感じました。GCAでは2年間学び、20歳で就職のために上京しました。

職人の「手の感覚の繊細さ」に衝撃を受け
手の皮が剥けるまでサンドペーパーをかける
埼玉県にあるESP新東京工場に入社、試用期間を経て木工として配属されました。最初は木地調整の最後の工程として手技の仕事を担いましたが、サンドペーパーをかけた後の木地を手で触れて仕上がりを確認しても「まだボコボコしている」と指摘され、職人レベルの手の感覚の違いに衝撃を受けたのが印象に残っています。負けず嫌いなので手の皮が剥けるまで磨き、必死に食らいつく毎日。それでも1年目は友だちもいない埼玉の知らない土地での暮らしに馴染めず、週末の度に夜行バスで大阪に帰省していました。
木工としての職人技術を日々磨き
ショーモデル製作でやりがいを見出す
木地磨きの仕事は1年半続き、職人としての木工の基本を叩き込みました。その後は接着などの加工にも従事し、現在はフレットを打った後のネック全般の業務「グリップ形成」を担っています。入社して8年目になりましたが、通常業務だけでなく、ESPのSHOWモデルのギター製作に携われたことが嬉しかったです。自分でデザインし、自分しか作れないオンリーワン作品をこの手で作った喜びは、何物にも代えがたい経験となりました。
職人全員が同窓生の職場環境
ハンドメイドを極め名曲誕生に寄与したい
当社勤務の職人全員がESP各学校(GCA2校/ESPエンタ3校)の卒業生。皆ギターが好きで仲間意識があり、工場というよりも職人が集う工房のような職場です。製品づくりではやりたいことに対し、会社が柔軟にチャンスをくれる有難い環境でもあります。正解のないものづくりは簡単にゴールが見えません。一人前になるにはあと何年かかるか知れませんが、10年後にはこの職場でギター作りの技術を高め、毎年入社する若手たちを育てたいと希望しています。ギター作りは一人でできない作業も多いので、相手の目線に合わせたコミュニケーションを大事にしたいです。
最近はギターメーカーにもAIが入り、いずれコストが下がって価格競争になるかもしれません。それでもESPは半世紀にわたるハンドメイド・オーダーメイドを貫いた強みを活かした、唯一無二の製品づくりを進化させたいです。ギターは思いのこもった楽器であり、ヒット曲や名曲など新たな音楽が生まれるかけがいのないものだと自負しています。これからも誰も見たことのないギターを作り、世界中の人に楽しんでもらいたいです。

