医療法人社団 双愛会
ファミリークリニック蒲田
理学療法士 リハビリテーション課課長
原田 俊さん
はらだ しゅん▶群馬県出身。帝京科学大学医療科学部理学療法学科で理学療法士の資格を取得。卒業後、複数の病院に勤務。2017年よりファミリークリニック蒲田に勤務、訪問リハビリの業務に従事。現在は同院でリハビリテーション課の課長を務める。
患者さんが、ある日自然に体を動かして後から「できた!」と喜んでくれた時が嬉しいです
「歩いて買い物に行く」などの目標を設定し、プログラムを作成
―現在のお仕事についてご説明ください。
訪問リハビリといって、病院ではなく患者さんのお家でリハビリを行います。一日にだいたい5、6人くらいの患者さんのお家に、主にバイクでうかがいます。一回のリハビリに割く時間は40分から1時間程度です。
―患者さんのリハビリには一人あたりどのくらいかかるのですか?
ベースは年単位で、1年以内に終了される方も、もう5、6年のお付き合いになる方もいらっしゃいます。病院ですと入院できる期間が決まっているのですが、訪問の場合は期間の制限がないのが利点ともいえます。最初に患者さんと話し合いをして現在の症状を確認し、次に目標、例えば「歩いて買い物に行けるようになる」を設定し、それに合わせてリハビリのプログラムを組みます。目標が達成できれば終了で、できなければその理由を考えつつ目標ややり方が合っているか繰り返します。
リハビリの結果、患者さんがある日自然に体を動かして、後から気づいて「できた!」と喜んでくれた時は、こちらも嬉しくなります。意識せずに体を動かせるようになることこそが、真の意味でリハビリ成功だと思いますので。
患者さん自身に動いてもらうことが大事
―このお仕事をめざしたきっかけは?
高校時代はバスケットボールに熱中して、進路を考える際、どうせならスポーツに関わる仕事がしたいと思いました。最初はアスレチックトレーナー(AT)の仕事に興味を持ちましたが、調べるとATは狭き門だと知って、はたして自分になれるのか?と不安を感じていました。そのうちに「スポーツリハビリ」という分野と理学療法士のことを知り、身体能力を回復させる仕事に興味が出て、理学療法学を学べる大学に入りました。大学は楽しかったですが、私は一期生だったので、テストの時などどんな問題が出るかがわからず、ひたすら勉強しました。
卒業後、訪問看護を経験した際に、病院ではなく患者さんのお家で診療ができることの大切さに気付きました。ならばそういう仕事を頑張ろうと思い、7年前、訪問リハビリを行っているこのクリニックに就職しました。
―リハビリにとって大事なことは?
リハビリというものは、患者さん自身が動いてくれないことには効果が出ないため、いかに動いてもらうかを心がけています。運動も難しすぎると患者さんのモチベーションが下がりかねないため、適切な量や内容の運動を提供すること、そのためにはどんな情報を伝える必要があるか、いろいろ考えます。
コンサートで好きな歌手の歌を聴くためのリハビリを
―これまでのお仕事の中で、特に強く記憶されていることは?
ある末期がんの方が、亡くなる前に好きな演歌歌手のコンサートに行きたいと言われ、どういうリハビリをするべきか考えました。最初は筋力や体力をつける運動など普通のリハビリをしていましたが、コンサートの間しっかり座席に座っていられるようにする、という目標が定まってからは、どれだけ座り続けられるかをリハビリ外の時間にご家族と確認をしてもらい、以降は徐々に体力を伸ばしていくリハビリに切り替えていきました。
その後、その方はちゃんとコンサートを楽しむことができました。生前のご本人も、ご家族も行けてよかったとおっしゃってくださいました。自分としても、微力ながら一緒にお役に立てたのかな、と今でも思います。
―今後の目標は?
病院でのリハビリは一般的ですが、訪問リハビリはまだ社会に浸透していないと感じます。今後もっと多くの人たちに知ってもらえるよう、広報活動を含めて頑張ります。