介護の経営者に聞きました

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もり かおる▶営業織として2002年に入社。「お客様の困っていることを解決する」という基本姿勢を元に、既成概念に囚われない、新しいビジネスの創出や商品・サービスの改善に取り組む。

介護保険のない国、アメリカでの体験に強く心を打たれ、デイサービス・ラスベガスの開設を決意

―介護業界に転職した動機を教えてください。

 もともと他の業界で営業職をしていました。転職の動機はテレビ番組です(笑)。放送内容は2000年から介護保険が始まり新規参入が多く、独立して介護会社を設立した元営業マンが活躍しているというものでした。それを見て介護業界に興味を抱き、何社か面接を受け、2002年に営業職として今の会社に採用されました。入社当時は少人数だったので、事業に関わる仕事は何でもやりました。スタッフの面接、給与計算、介護保険請求、緊急対応等々、大げさな話ではなく365日休まず働いていたように思います。現在ではそうした働き方は禁止しています(笑)。大変なように聞こえますが、学校と違いお金(給料)をもらって色々学べるので「お得だ!」と感じましたし、ご利用者やご家族から喜ばれることに私も喜びを感じました。

―ラスベガス開設のきっかけは何でしょう?

 15年前に当社が営むデイサービスをご利用されている、男性の利用比率がとても低いことに疑問を抱きました。従来型デイサービスのレクリエーションには、男性が好まれるようなメニューがなかったのです。「男性ご利用者に楽しんでいただける新しいサービスを開発しなくては!」と思い、既成概念に囚われず、あえて介護保険のないアメリカへ行きました。介護事業だけでなく、さまざまな事業やサービスを視察しましたが、ラスベガスのカジノを視察したときにふと気がつくと、お客様の大半が高齢者でした。その中には車椅子の方、杖をつかれた方がおられましたが、皆様それぞれとても楽しまれていたのが印象的でした。「日本にもこんな場所があれば」と思いましたが、日本でカジノ運営はできません(笑)。それならば「デイサービスをカジノにしてみたら?」と思ったことがきっかけですね。

―カジノ型デイサービスを開始・運営するにあたり、ご苦労された部分をお聞かせください。

 カジノテーブル、麻雀、パチンコが設置されたデイサービスは前例がないので、行政へ申請書を提出したときには「本気で?」みたいな雰囲気でした。ただ、私は本気でしたから、アメリカの視察で学んだことやお金は賭けないこと、介護保険法に沿って運営する旨を伝えました。担当の方の現地視察を経て、2013年に1号店の認可を得ました。運営してからは苦労というか誤解が多いですね。現在、23店舗に1,200名の方がご利用されていますが、ご利用中は要介護状態であることが分からないくらいお元気に見えるので、「税金を使って遊んでいるだけ」と誤解されることがあります。しかし私達は税金を使っているからこそ結果を出しているので、丁寧にお話して誤解を解いています。結果にはさまざまありますが、機能訓練の時間は全国平均値より長く設けることに成功しましたし、要介護5の方が3まで改善した事例も珍しくありません。

―従来型デイサービスとは働き方が違うのでしょうか。

 基本的には変わりません。私はご利用者にとって大切なことはスタッフとのコミュニケーションだと考え、当社ではその時間を多く設けるために事務作業はシステム化しています。また20代のスタッフがご利用者とお話しする際に、年齢差が60歳といった場合が多々あります。そのコミュニケーションを難しく感じるスタッフでも一緒に麻雀やカードゲームに参加することで、簡単にコミュニケーションが図れます。従来型デイサービスとの大きな違いは、従来の研修に加え麻雀やカードゲームの研修を行っていることです。そこではご利用者と真剣にゲームを楽しむために必要なルール、マナー等をスタッフに教えています。ご利用者がラスベガスへ抱く期待を裏切ることのないように心がけています。ラスベガスのレクリエーションは今までにない新しいサービスです。それはご利用者が生活していく上で、明るく楽しい方向に向けて大きく作用していると日々実感しています。

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介護職をめざす高校生へのメッセージ

資格取得がゴールではありません
高齢者が増えていく日本にとって皆さんの力が必要です。これから皆さんは国家資格やそれに準じる資格を取得するかと思いますが、資格取得に甘んじることのないようにしてください。資格自体に尊敬や権威はありません。資格を取得された皆さんが、困っている人のために最善を尽くしたときに、保有資格ではなく皆さん一人ひとりに尊敬や権威が生まれると思います。皆さんのご活躍を大いに期待しています。

※このインタビューは2019年6月に収録したものです。

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