株式会社豪勢スタジオ
映像作家・クリエイティブディレクター
藤井 亮さん

ふじい りょう▶愛知県出身。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒業。電通関西、フリーランスを経て2020年に株式会社豪勢スタジオ設立。CMを中心にMV、書籍、舞台など数々の遊び心にあふれたコンテンツを手がける。2022年、NHK Eテレでオンエアされた番組「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」は大人気となり、2025年8月より映画「大長編 タローマン 万博大爆発」が公開予定。
「楽」だと「楽しい」ものが生まれなくなるので
大変でしんどいものにばかり手を出しています
「石田三成」で初めてつかんだ手応え
高校最初の定期テストで下から3番目の成績を取ってしまった時、勉強よりも自分の得意なところで勝負しようと思い、絵を描いたりものを作ったりすることは昔からよくやっていたので、デザインの分野を目指すようになりました。そうして入った美大で、あるとき4人くらいでちょっとした映像を作って、コントみたいなふざけた内容でしたが授業で見せたらドッと受けて、映像作りの楽しさにはまりました。でも僕たちの頃は映像制作の仕事といえば映画かテレビ、CMくらいしか選択肢がなくて、ならCMを作ろうと広告代理店に飛び込みました。
入社してから10年くらいは自身の作品と呼べるものはなかったですが、30代になって徐々にできることが増えてきました。初めて手応えをつかんだのは2016年の「石田三成CM」(※1)で、内容からクライアントへのプレゼンまですべて自分でやって、面白がってもらえて、この方向でいいんだ!と確信が持てました。
※1…滋賀県による、同県出身の大名・石田三成をフィーチャーしたCM。オンエア当時は、低予算ローカルCM風の映像がインターネットを中心に話題となった。

本当にあった?と思わせるくらい作り込む
僕の場合、アイデア自体はそこまで新規性があるわけではないです。「タローマン」でも、特撮ヒーロー化なんてめちゃくちゃベタな手法じゃないですか。でもそこを「〇〇風」ではなく、もしかしたらこれって昔テレビで実際に放送していたの?と思わせるくらい作り込むことが僕のこだわりです。山口一郎さん(※2)を出したのもその流れで、せっかく特撮映像にしても「この回は岡本太郎先生の〇〇という作品を元にして…」なんて説明をただ入れると見た人が興ざめしてしまうので、「当時番組を見ていた人が思い出を語るという形で、モチーフの作品を説明する」ことをやろうと思い、そのために「ひょっとしたらこの人は本当のことを言ってるのでは?」と思わせられるような絶妙なラインを狙ってキャスティングしました。
※2…ロックバンド「サカナクション」リーダー。「タローマン」には「少年時代にタローマンのファンだった人物」として出演し、「当時の思い出」を語る。

皆さんが見たいと思っているものを作れているだけでありがたい
楽しいものを作ることは楽だとよく思われがちなんですが、「楽しい」と「楽」は全然違うんです。「楽」な方にいっちゃうと楽しいものが生まれなくなるので、大変だろうな、しんどいだろうな、という方に手を出してばかりいます。どうしたら面白くなるんだろう…と悩むことも結構多いです。
CMって、そもそもみんなが見たくないものを無理やり見せるものじゃないですか。僕の場合そこからスタートしているので、今は逆に皆さんが見たいと思って見てくれるものを作れるというだけでありがたくて、それを続けるためにもできる限りの努力をしようと思っています。一番怖いのは自分が飽きて、惰性でものを作るようになることです。ですのでなるべく飽きないよう、これからも「こんなことをやっているなんて!」と自他ともに驚く仕事をしていきたいですね。
