ギターリペアのスペシャリストに聞きました

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ながお たかし▶埼玉県出身。KTC中央高等学院(現:KTCおおぞら高等学院)大宮キャンパスから東京国際大学商学部へ進学するが3年生で中退しキャリアチェンジ。2017年ESPギタークラフト・アカデミー(GCA)東京御茶ノ水校へ入学。2021年3月卒業。4月チバカン楽器船橋店へギターリペアマンとして就職。高2から9年間、ESPギター教室で演奏や作曲を学ぶ。

「耐え抜いた強さ」が中古ギターの魅力
新たなユーザーへ旅立たせるリペアの仕事

大学生からのキャリアチェンジ
“手に職が付く音楽の仕事”をめざし専門校へ

 高校までは野球部と軽音楽部にも所属する傍ら、ギター教室にも通いはじめ、DTMソフトでの作曲も学びました。卒業後は大学に進学したものの、次第に「将来は音楽を職業にしたい、そのためにはまず手に職を付けたい」という思いが大きくなった気がします。ものづくりが好きなこともあり、卒業を待たず大学3年の途中で中退、ESPギタークラフト・アカデミー(以下GCA)東京校に入学しました。もともと通っていたギター教室がESPの系列で馴染みはあったのですが、入学前には体験授業に何度も参加し、先生方の講義を聞いて納得して選びました。両親にはGCAの資料を集めて「就職率の高さ」をプレゼンテーションし、キャリアチェンジを了承してもらいました。

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1本のギターから作り手と弾き手の対話を深め 気づきと技術を磨く

 GCAの授業はまず、1年生で基礎を学びます。楽器の構造など講義のほか、ボディの加工、塗装、組み込みなどを実習し、全員が3種類のギターを作りました。2年生からはより専門性の高い講義になり、自分のペースでスタンダードモデルを1本製作したら、その後は各自が自由に作品づくりに励みます。私にはものづくりの技術だけでなく、作り手であるクラフトマンと弾き手のミュージシャンとの間の溝を埋めていきたい、という希望があり、製作した作品は知り合いの方々に弾いてもらって感想を聞く、その作業を繰り返しました。対話を通じて視点の違いに気づき、専門用語を使わずに、いかにわかりやすく伝える話し方や要望の伝え方を学んでいたように思います。通っていた音楽教室の先生方にも私の作品を弾いていただき、評価を頂戴しました。この活動を通じて、ミュージシャンが何を求めているのか、それに対して技術者がどこまで応じられるかの気づきを得るチャレンジだったと振り返っています。

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総合的なリペア技術を身に付けた4年間
コロナ禍でも求人票が多数届く

 GCAは、学生の年齢層が幅広いのも特徴です。高卒者のほか、私のように大学中退者や社会人経験を経て入学する人、定年退職後に入学する人もいます。特に年長者との学校生活は社会勉強になることも多く、貴重な経験になりました。またGCAは2年生以降、卒業年次を自分で決められる自主性を重んじています。たとえばギターメーカーに就職して製作工場での勤務をめざす人は、2年間で必要なスキルを身に付けることが可能です。しかし、私は「まだ作り足りない」という思いがありました。リペアマンとして総合的な仕事―木工、塗装、電子回路など、ギターリペアに関わるすべての分野の基礎技術を学ぶのは在学中にしかできないと感じ、結局4年間通いました。
 就活は4年生の6月、求人票がGCAに届いていた企業から選びました。修理士を必要としていたことや、総合的なリペアもできることに魅力を感じ、チバカン楽器へ入社を決めました。卒業までの半年間は、アルバイト研修を経験しながら、仕事や職場に慣れていきました。

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活況な中古楽器市場
手離す方の思いも大切にしたい

 昨年からのコロナ禍で楽器がよく売れており、メーカーの工場も人材を求めています。私の会社は中古流通楽器を扱っていますが、修理士の需要も増えているのです。昨年の就活は大変な業界が多かったようですが、GCAには求人票がたくさん届いていました。裏を返せば「技術がなければ就職できない」ということだったのかもしれません。
 最近は「家にいるからまたギターを弾きたい」と来店されるお客様も多いですが、他方ではギターを売りに来られる方も多いのです。さまざまな事情で思い出のギターを手離されるのですから、その方の思いも大切に、新たな人の許へ旅立たせる準備を引き受けて次の方へ届けています。中古楽器の魅力は、「耐え抜いた強さ」だと思います。新品よりも弦が馴染み、しかも安価なので予算よりもワンランク上のギターを購入できます。特にビンテージギターは質の高い木材を使用しているので思わぬ名機との出会いもあり、中古市場はますます伸びるのではないかと期待しています。

ギター技術者をめざす高校生へのメッセージ

視点を変えて考える力を養おう
ギターリペアの仕事をしていると、学校では教わらなかった修理依頼の方が多く、総合的な基礎力がないと技術の応用ができないことに気づかされます。そのためには目の前の楽器をいろいろな目線からよく見て、考える力が大切だと学びました。

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