麻酔科医のスペシャリストに聞きました

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ながさか やすこ▶東京都出身。東京女子医科大学医学部卒業。聖路加国際病院内科系研修医および麻酔科研修医・医員、東京女子医科大学麻酔科研究生・Ph.Dコース、ハーバード大学マサチューセッツジェネラルホスピタルなどを経て、2016年から2020年まで聖路加国際病院麻酔科部長を務める。現在は日本麻酔科学会代議員、日本周麻酔期看護医学会代表理事など、様々な役職を兼任中。

現場主義なので、麻酔の担当がない日でも
オペルームに入りたくなる時があります

麻酔科医という仕事が私は本当に大好きなんです

-長坂先生が医師を志したきっかけは?

 色々ありますが、3冊の本の影響が大きいです。幼い頃に母が読んでくれた野口英世の伝記、小学生の時に読んだ手塚治虫の「ブラック・ジャック」。そして、高校生の夏休みの課題読書に選んだ「原子爆弾救護報告書」です。これは長崎医科大学の放射線科医師だった永井隆さんが、原爆の被災者の救護活動をなさっていた時に書かれたもので、初めて読んだ時は強い衝撃を受け「自分も生涯、患者さんたちのために生きなくては!」と思いました。

―麻酔科を選んだ理由についてお聞かせてください。

 はじめは内科医を志して、大学卒業後は聖路加国際病院で研修を受けていたのですが、麻酔科をローテーションする機会がありました。麻酔科医は内科的な視点を持ちながら、外科的な要素もあって。患者さんの痛みを抑えて、患者さんの様子がみるみる良くなっていく姿を目にした時は、とても感動的でした。こんな仕事をやってみたいなあと思っていた矢先、当時の麻酔科の部長であった恩師の先生が「あなたは(麻酔科医に)向いているから、こっちに来なさい」と言ってくださって。そうして、卒業後4年目に内科から麻酔科に研修先を移したことがはじまりです。

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オペルームにて。

―お仕事は好きですか?

 はい。私は、本当に今の麻酔科医という仕事が大好きです。麻酔とは、基本的に患者さんが寝ている間のことなので、患者さんたちの多くは私達のしたことについてよく知らないと思いますし、私はそれでいいと思っています。ただ、患者さんに貢献しているという喜びはいつだって心の中の深いところから湧き出ています。
 麻酔が予定通りにいった時はとても嬉しいですし、ルンルンです(笑)。逆に上手くいかない時は本当に辛いんですが、だからこそ日々勉強し、もっと精進したいと思っています。

学生たちには自分の手の内を全て見せるつもりで教えています

―現在はどういったペースで医師としてのお仕事をされていますか?

 管理者としての仕事をこなしながら、医師としては週一回、毎週火曜日は必ず臨床の現場に立って心臓麻酔を行っています。それと、いろんな意味で自分じゃなければならない患者さんの時は、オペルームや分娩室(無痛分娩も麻酔科のお仕事です)に入って麻酔しています。私は現場主義なので、麻酔担当のない時でもオペルームに入りたくなるというか、なるべく現場にいないと落ち着かないですね(笑)。外来も水曜日に枠を持っています。
 それ以外にも、大学や大学院の講義・実習、学会での仕事、会議、そして研究と、毎日盛りだくさんです。研究については、ありがたいことに今年4月から大学院生が私の研究室で「一緒に研究したいです!煮るなり焼くなりしてください」と言ってくれて(笑)。そういった皆さんの協力を受けながら、大好きな研究への情熱を燃やしています。

―大学での講義や実習において、意識されていることはありますか?

 医師国家試験では、他と比べて麻酔科の出題が少ないので、資格試験対策よりも基礎医学の知識がどれ程臨床で役立っているかという、基礎から臨床への橋渡しのような内容を学生さん達に伝えるようにしています。例えば、筋弛緩薬についての実習では、筋肉が弛緩する様子をモニターで確認しながら薬を投与するんですが、どのような作用で薬が効くのかを解説したり、基本的なところを意識して伝えるようにしています。麻酔が上手くいった時だけでなく、むしろ上手くいかなかった時にどうリカバリーをするかについても、自分の手の内を全部見せるつもりでよく話しています。
 あとは授業以外でも、学びの疑問点からプライベートまで、みんなからいろんな相談を受けていますね。そういった全てを含めて私は、学生さん一人ひとりの応援団といった気持ちで接しています。

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学生たちとスキルスラボ(シミュレーションセンター)にて。

医師をめざす高校生へのメッセージ

「ありがとう」を託していただける仕事です
医師という仕事は、人から「ありがとう」と言っていただける仕事です。実はその「ありがとう」は、ものすごい責任がある「ありがとう」です。でもだからこそ、「ありがとう」を託していただける仕事なんじゃないかと思います。私たちの存在が人の生き死にを左右する、なんておこがましいことはとても言えないです。ただ、人が生きるためのお手伝いをする。それが私たちの仕事です。ですので、そんな仕事に人生をかたむけて見たいというあなたはぜひ!医学の道に進んでください。

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