建築設計のスペシャリストに聞きました

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ふじむら ひろふみ▶高校を卒業後、芝浦工業大学の建築学科に入学。大学を卒業後、東京工業大学大学院 建築学系の修士課程に進学。修士課程のうち1年間はヨーロッパの建築を学ぶため、スペインのバルセロナに所在するカタルーニャ工科大学バルセロナ建築学部に留学。修士課程修了後、株式会社日本設計に入社し、現在4年目。

建築を通して社会や理想を表現することができる職業
色んな価値観に触れることが建築の仕事に活きる

建築を通して社会に対する理念を表現できる

 建築を学ぼうとする人は、「将来は建築家になる」という明確な目標を持っているケースが多いです。私は最初はそういうタイプではありませんでしたが、本を読んだり学びを深めていく中で、建築家が単に建物をつくっている人ではないということに気づきました。設計をして建物というモノをつくっていることは確かなのですが、建物を使う人の生活や、周辺の出来事までを考えながら、設計していかなければなりません。直接的にはモノを設計しているのですが、建築を通して、人の行動や出来事を設計しているのが建築家という職業です。このように社会に対する理念を表現していくことができることを知って、建築に対して次第に興味を持つようになりました。大学3年生になると設計の授業が本格的に始まるのですが、社会に対しての意見や考えている事柄を建築という形に置き換えて表現するというプロセスが自分の性に合い、とても楽しかったことを覚えています。

建物は多くの人が協力しないと完成しない

 例えば陶芸なら一人でろくろを回して作品をつくることができますが、建物はすごく複雑で多くの人が関わらないとつくれません。大きな建物ほど関係者は多くなりますし、関係者が多くなればなるほど、コミュニケーションも大切になってきます。皆でゴールを共有して一つのチームになって進めていくことが、建築の大変さであり面白い点でもあります。

言われていないことを勝手にやることの重要性

 仕事において重要だと感じているのは、皆を巻き込んで「この人のためだったら頑張ろう」と感じてもらえるような人になることです。また、「言われていないことを、いかに自分勝手にできるか」ということも大切だと考えています。設計者は、それぞれ個性を持っていますが、特に大規模な建築を設計する際には、役割分担をすることになります。そうした状況で、チームメイトが考えつかなかったような仕事を自分で見つけて実行することが、クリエーションにつながると思いますし、自分の個性を発揮する機会になると考えています。

色んな場所に行ったことが役立っている

 私は3つの大学に行き、色んな人に出会って、色んな価値観に触れてきました。そういった人や文化との出会いが私の個性を形づくっていて、今の仕事に役に立っていると感じています。様々な価値観を知ることで、自分の引出しを増やすことが将来役立つと思います。旅行に行くなどして、故郷以外の自分のバックグラウンドになるような場所をつくれたら素敵ですね。

地方にこれまでになかった建物をつくりたい

 今後の展望は、まずは目の前の仕事を一つひとつ一生懸命にやるということが一番です。他には、これまで都心の仕事が多かったので、地方の仕事にもとても興味があります。新型コロナが収束しつつあり、人々の価値観や人口分布が急速に変化する中で、これまで存在しなかった建物や空間を、地方につくることができるのではないかと考えています。弊社には都市計画の部門があり、建築単体だけでなく、まちづくりなどの広い範囲での設計業務を行っています。そういった強みを活かして、新しいことにチャレンジしていきたいです。

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建築業界をめざす高校生へのメッセージ

寄り道をして自分の糧になるものを見つけて欲しい
最短距離で物事を学びたいと思いがちですが、特に建築の設計を目指す人には、色んな価値観に触れ、様々な寄り道をして、自分の糧になるものを見つけてほしいです。一つのことを突き詰めて深堀りするということも大事ですが、視野を広げて色んなことを知っておくということも建築に関わるうえで大切なことだと思います。

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