現在どのようなお仕事をされているのですか?
名古屋にパティスリー『レクラン・ド・ユミコ』をオープンし、パティシエをしています。宝石箱のように“キラキラ”が詰まった、笑顔あふれるお店にしたいと思い、フランス語で「宝石箱」という意味の「レクラン(L'ECRIN)」を店名に入れました。
新作は素材から発想することが多いです。例えば、イチジクを使う場合、タルトにするなら土台にカスタードクリームとイチジクをのせて完成させるのが一般的ですが私は一つずつ、パーツから考えていきます。すごく手間がかかるんですけどね(笑)。お客様に喜んでほしいから妥協はしません。
どんなところにやりがいを感じますか?
自分のお店をもって一番うれしいのは、自分のお菓子を自由に表現できることです。どこかのお店に入ると、そのシェフが想い描くものに近づこうとしますが、いまめざすのは私の理想。私にしかできないお菓子を出したいので、ここでしか食べられないものを意識しています。一口食べたあとにわかる驚きを入れるなど、組み合わせ方はものすごく考えますね。
新作ができるとInstagramにアップするんですが、それをチェックした常連さんがすぐ買いに来られ、ご自身でも撮影してハッシュタグ付きでアップしてくださる。それがまた、うれしいんですよね。小さなお店なので、お客様の反応も直に見られます。リアクション見たさに、洗い物をしながら覗いたりして(笑)。一口目に『おいしい~!』って言ってもらえるとたまらなくうれしい。厨房をのぞき込んで『おいしかったです~!』なんて言ってくださる方もいて。お客様から毎日、“キラキラ”をもらっています。
学生時代に学んだことが今どのように生かされていますか?
小さい頃から日常的にお菓子をつくる家庭だったので、友だちの誕生日にはホールケーキを仕上げて学校へ持って行っていました。みんなが喜んでくれるのがうれしくて、自分の進みたい道はやはりこれだと感じていました。
お菓子を学ぶならフランスに行かなきゃと、迷わず辻製菓を選び、フランス校へ進学しました。かつて海外留学を経験していた父親から、『若いうちに海外へ行け』とずっと言われていたので、それも後押しになって。単身で行くのはハードルが高いですが、守られた環境でいろんなものを見られたからありがたかったです。フランス菓子が生まれたのも、あの風土や気候があってこそなんだと肌で感じられましたし、それを早い段階で体感できたのも大きかったです。
今後の目標を教えてください。
最近では、一般の方に向けたお菓子教室や、母校である辻調グループなどの製菓学校に、外来講師として呼んでいただいたりします。お菓子づくりの楽しさを伝えたいという思いももちろんですが、女性でもお店が持てるってことを見せたいです。店名に自分の名前を入れたのも、自己主張をしたかったわけではなく、女性がオーナーだとすぐにわかるから。
この業界で女性が独立するケースは圧倒的に少ない。製菓学校に入る率は女子のほうが高くても、実際残るのは男性のほうが多いんです。私も紆余曲折ありましたが、諦めなかったからこそ、いまこうやって夢をかなえられました。これからめざす人たちも、『理想と違う』と投げ出すんじゃなく、『理想を実現する』という気持ちで突き進んでいってほしいです。